葉酸の形態

ヒトは葉酸を食物から摂取しなければならない1。細胞は、DNAの塩基とアミノ酸のメチオニンを合成するための炭素原子を、1個ずつ葉酸に結合させて保持する1。

食品に添加され、サプリメントにも含まれる合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)によってテトラヒドロ葉酸(THF)に還元されて初めて活性をもつ21。

チミジル酸とプリン

分裂中の細胞は、炭素原子を1個ずつ組み込んで、DNAの塩基であるチミンとプリン塩基を合成する1。

チミジル酸合成酵素は、5,10-メチレン-THFの炭素をdUMPに転移し、dTMPとジヒドロ葉酸(DHF)を生成する1。

チミジル酸回路細胞質ゾル、核、ミトコンドリア
123テトラヒドロ葉酸(THF)5,10-メチレン-THFジヒドロ葉酸(DHF)
  1. テトラヒドロ葉酸(THF)5,10-メチレン-THFセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT1、SHMT2)L-セリン → グリシン, ピリドキサール5′-リン酸
  2. 5,10-メチレン-THFジヒドロ葉酸(DHF)チミジル酸合成酵素(TYMS)dUMP → dTMPフルオロウラシルペメトレキセド葉酸が炭素原子と、それをメチル基まで還元する2個の電子を供給する
  3. ジヒドロ葉酸(DHF)テトラヒドロ葉酸(THF)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)NADPHメトトレキサート合成葉酸をDHFに還元する反応も触媒するが、ヒトの肝臓ではこの反応は遅い

メトトレキサートはDHFRを阻害し、葉酸をDHFの形のまま滞留させる1。

MTHFRと677C>Tバリアント

酵素MTHFRは細胞内の葉酸の一部をメチル葉酸に変換し、メチル葉酸はメチオニンの合成にメチル基を供給する3。この酵素の遺伝子にみられる頻度の高いバリアント677C>Tは、酵素の安定性を低下させる3。

TTホモ接合体から得た細胞抽出液の活性は、CCホモ接合体の細胞抽出液の約30%である3。ヨーロッパ系の人々と日本人では、約10~15%がTTホモ接合体である3。このバリアントは、軽度の高ホモシステイン血症の遺伝的原因として最も頻度が高い3。

メチオニン合成酵素とビタミンB12

メチオニン合成酵素はビタミンB12を必要とする4。この酵素はメチル葉酸のメチル基をホモシステインに転移し、メチオニンを再生するとともに葉酸を解放する42。

葉酸回路のメチル基分岐細胞質ゾル
123テトラヒドロ葉酸(THF)5,10-メチレン-THF5-メチル-THF
  1. テトラヒドロ葉酸(THF)5,10-メチレン-THFセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ1(SHMT1)L-セリン → グリシン, ピリドキサール5′-リン酸ミトコンドリアではSHMT2が同じ反応を触媒する
  2. 5,10-メチレン-THF5-メチル-THFメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)NADPH, FAD生体内では不可逆。SAMにより阻害される。Ala222Val(677C>T)型の酵素はFADをより速く失う
  3. 5-メチル-THFテトラヒドロ葉酸(THF)メチオニン合成酵素(MTR)ホモシステイン → メチオニン, メチルコバラミン亜酸化窒素5-メチル-THFを消費する唯一の反応。ビタミンB12欠乏で遅くなる(メチル葉酸トラップ)

ビタミンB12が不足すると、メチル葉酸を消費する反応がほかになく、MTHFRの反応も逆向きには進まないため、メチル葉酸が蓄積する2。このメチル葉酸トラップによって、機能的な葉酸欠乏が生じる25。

S-アデノシルメチオニンとホモシステイン

メチオニンは、主要なメチル基供与体であるS-アデノシルメチオニンに変換される6。メチル基が1回転移されるごとにホモシステインが生じ、ホモシステインはメチオニンに再変換されるか、システインに分解される6。

合成葉酸の還元と葉酸の一炭素回路肝細胞と分裂中の細胞の細胞質ゾル
  1. 合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)
  2. ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)NADPHメトトレキサートヒトの肝臓では遅く、ばらつきが大きい。食品中の還元型葉酸はこの段階を経ない
  3. 7,8-ジヒドロ葉酸
  4. ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)NADPHメトトレキサートチミジル酸合成酵素(TYMS)が放出するジヒドロ葉酸も還元する
  5. テトラヒドロ葉酸
  6. セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(細胞質ゾルのSHMT1、ミトコンドリアのSHMT2)セリンからグリシンへ, ピリドキサール5′-リン酸分岐:TYMSがこの炭素をdUMPに転移し、DNAの材料となるdTMPを生成する
  7. 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸
  8. メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)NADPH, FAD生体内では不可逆。SAMにより阻害される。677C>Tバリアントでは活性が低下する
  9. 5-メチルテトラヒドロ葉酸
  10. メチオニン合成酵素(MTR)メチルコバラミン, ホモシステインからメチオニンへビタミンB12欠乏ではこの段階が遅くなり、葉酸が5-メチル-THFの形で滞留する
  11. テトラヒドロ葉酸

参加者71,422人を1~7.3年間追跡した15件の無作為化試験では、ビタミンB6、B9(葉酸)またはB12によってホモシステインを低下させても、心筋梗塞は予防されなかった7。心筋梗塞は治療群の7.1%、プラセボ群の6.0%に発生した(リスク比1.02、95%信頼区間0.95~1.10)7。脳卒中はそれぞれ4.3%と5.1%に発生し(0.90、0.82~0.99)、未調整の絶対差は0.8パーセントポイント、治療必要数は約125であった7。

巨赤芽球性貧血

葉酸またはビタミンB12が不足すると、骨髄ではDNAを正常に合成できなくなり、血液中の赤血球は数が減って、一つ一つが正常より大きくなる12。

5,10-メチレン-THFが少ないとチミジル酸の合成が遅くなるため、DNAポリメラーゼがDNAにウラシルを取り込む5。葉酸欠乏の成人(n = 8)では、血液のDNAに含まれるウラシルが対照群(n = 14)の8倍であった5。ビタミンB12欠乏症では、脱髄による脊髄と末梢神経の障害(ミエロニューロパチー)が起こることもあり、これは葉酸欠乏症ではほとんどみられない2。