コレステロールの役割
コレステロールは脂肪に似た分子で、ヒトの細胞の膜に欠かせない成分であり、体内でステロイドホルモン、胆汁酸、ビタミンDに変換される12。
合成:メバロン酸経路
細胞は、炭素原子2個からなる単位であるアセチルCoAから、30を超える酵素反応を経てコレステロールを合成する12。
- アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ2(ACAT2)2分子のアセチルCoAを縮合し、CoAを放出する
- HMG-CoA合成酵素1(HMGCS1)アセチルCoA, H2O3つ目のアセチル単位を付加し、CoAを放出する
- HMG-CoA還元酵素(HMGCR)2 NADPHスタチン律速段階。小胞体膜の酵素で、CoAを放出する
- メバロン酸キナーゼ(MVK)ATP
- ホスホメバロン酸キナーゼ(PMVK)ATP
- ジホスホメバロン酸脱炭酸酵素(MVD)ATPCO2とリン酸を放出する。生成物はC5のイソプレノイド単位
- イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ1(IDI1)
- ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)イソペンテニル二リン酸C5単位を1つ付加し、二リン酸を放出する
- ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)イソペンテニル二リン酸ユビキノン、ドリコール、ヘムA、プレニル化蛋白質への分岐点
- スクアレン合成酵素(FDFT1)NADPHプレスクアレン二リン酸を経て、ファルネシル二リン酸2分子を結合する
- スクアレンモノオキシゲナーゼ(SQLE)O2, シトクロムP450酸化還元酵素(POR)を介したNADPH, FADステロール合成の律速酵素ともみなされる
- ラノステロール合成酵素(LSS)環化により最初のステロールが生じる
- 複数の反応段階Bloch経路または修正Kandutsch-Russell経路。最初はCYP51A1、最後はDHCR24またはDHCR7
HMG-CoA還元酵素は小胞体(ER)膜の酵素で、律速段階を触媒する34。スタチンはこの反応を阻害する3。
ステロールの感知:SREBP-2、SCAP、INSIG
細胞は、内部の膜の一つである小胞体のコレステロール含量に応じて、コレステロールの合成と取り込みにかかわる遺伝子をオンまたはオフに切り替える54。
小胞体のコレステロールが少ないとき、SCAPは転写因子SREBP-2をゴルジ体へ輸送する4。ゴルジ体では2種類のプロテアーゼがSREBP-2から一つのドメインを切り離し、このドメインがLDL受容体とコレステロール生合成酵素の遺伝子を活性化する41。小胞体のコレステロールが増えると、SCAPはコレステロールおよびINSIGと結合し、この複合体は小胞体にとどまる4。チャイニーズハムスター卵巣細胞では、小胞体のコレステロールが小胞体脂質の約5 mol%を超えると、SREBP-2のプロセシングが急激に低下した5。ハムスターとマウスの実験に基づくモデルでは、スタチンは肝細胞の小胞体に含まれるコレステロールを減らし、SREBP-2を活性化してLDL受容体を増やし、血漿LDLを低下させる1。
取り込み:LDL受容体
血液中のコレステロールは主に低密度リポ蛋白(LDL)粒子に含まれて運ばれ、細胞はこの粒子を表面の受容体を介して取り込む13。
LDLの大部分は肝臓の受容体によって血中から除去される1。家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体では、機能する受容体の数が半分で、LDLは正常の約2倍である1。
PCSK9
PCSK9は肝臓から分泌される蛋白質で、肝細胞のLDL受容体の数を減らし、その結果として血液中のLDLを増やす16。
PCSK9がLDL受容体に結合すると、受容体は細胞表面に戻らずに分解される613。ナンセンス変異Y142XまたはC679Xをヘテロ接合でもつアフリカ系アメリカ人では、LDLが28%低く、心筋梗塞が88%少なかった1。
吸収:NPC1L1
小腸の内面を覆う細胞は、腸管内のコレステロールの一部を、膜蛋白質NPC1L1を介して吸収する43。
排出:胆汁酸とコレステロール逆転送
ほとんどの組織はコレステロールを分解できない7。コレステロール逆転送では、コレステロールは高密度リポ蛋白(HDL)に含まれて肝臓へ戻る7。肝臓はこれをそのまま、または胆汁酸に変えて胆汁中に分泌する7。
コレステロールの分解の約90%は胆汁酸への変換による8。コレステロール7α-水酸化酵素(CYP7A1)は、古典的経路の第一段階であり律速段階である反応を触媒する83。胆汁酸結合樹脂は糞便中への胆汁酸の排泄を増やし、血漿コレステロールを低下させる8。胆汁酸吸着薬も参照。